『千葉県の地域防災計画』の基本方針

2014年03月22日 22:07

千葉県地域防災計画修正の基本方針

Ⅰ 計画見直しの必要性

・ 見直し検討の背景

昭和38年に策定した千葉県地域防災計画は、阪神・淡路大震災などの大きな災害 の教訓等を反映するため、これまで31回にわたる修正を行ってきた。平成22年5月の修正では、地震の被害想定を「元禄地震」を中心とするものから、より被害が甚大とされる「東京湾北部地震」に見直したことに伴う修正が行われたところである。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0という過去最大級の地震によって発生した未曽有の災害であり、東北3県を中心とした広域かつ甚大な被害が発生し、本県においても、津波や液状化等による人的・物的被害をもたらしただけでなく、本県の防災対策に係る多くの教訓をもたらした。

今後の防災対策にこれらの教訓を生かした見直しを行うことが急務であり、今般、地域防災計画の見直しを行おうとするものである。

・ 東日本大震災から得られた課題等

今回の地域防災計画の見直し検討に先立ち、県民の避難行動・防災意識に関する調査や、市町村・ライフライン事業者に対するアンケート調査を行い、分析を行うとともに、本県における今回の震災対応についての検証作業を行うことにより、課題の洗い出しを行った。

また、国においては、平成23年9月28日に中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」を公表し、同報告を踏まえた防災基本計画の修正が、同年12月27日に行われた。

さらに、本県議会からは、同年11月22日に、「東日本大震災復旧・復興対策特別委員会」の提言がなされたところである。

これらの成果などを地域防災計画の見直しに反映させることが重要である。

(1)これまでの調査・検証作業から導かれる課題

ア 今回の震災では、全国死者数が阪神・淡路大震災(6,434 名)をはるかに超える 15,844 名(H23.12.27 緊急災害対策本部発表)であり、戦後の災害史上最多の死者数を記録したことを踏まえ、人命の安全を最優先に考えた災害予防対策及び応急対策の見直しが必要である。

イ 発災直後においては、「自らの身の安全は自らが守る」のが基本原則であり、こうした自覚を持って平常時から災害に対する備えを心がけることが重要である。また、今回の震災においても、東北3県において、自主防災組織の活躍によって被災を免れた事例が紹介されている。これらの状況から、自助・共助の取り組みをさらに促進していくことが必要である。

  • 発災直後に津波を回避するために高台に避難したが、第一波が過ぎた後に一時帰宅し、第二波・第三波で被災した例があった。旭市・香取市の被災者を対象として実施した「県民の避難行動及び防災意識に関するアンケート調査」では、約4割の方が、一度避難してから津波が収まるまでの間に自宅へ帰ったと回答している。また、約8割の方が「地震=津波」という意識を持っていなかったことが明らかとなった。これらの結果を踏まえ、津波に対する正しい理解と防災意識の普及をさらに図っていくことが必要である。
  • 東北3県において、防波堤などの施設を過信したことにより避難が遅れた事例が報告されており、海岸保全施設の整備などのハードの対応のみをもって万全の防災対策を講じることには限界があることがあらためて浮き彫りとなった。これらの状況を踏まえ、ハード対策に過度に依存しない体制づくり、「減災」の観点からのソフト対策の強化を図っていくことが必要である。
  • 広範囲の液状化により上下水道等のライフラインが寸断し、応急復旧に時間を要したことを踏まえ、液状化に強いライフラインの整備や速やかな応急復旧体制の確立を図っていくことが必要である。
  • 阪神・淡路大震災以降、被災地に対する広域支援体制が充実し、支援物資についても全国から集積されることとなったが、支援を受け入れる被災地では、大量の支援物資の運搬や保管のノウハウに乏しいことから、被災現地への物資の供給が滞るなど、円滑な物資の供給を行う上での課題が指摘されているところである。今回の震災でも、東北3県において混乱が生じたことが報告されている。これらの状況を踏まえ、支援物資の供給体制の見直しを図ることが必要である。
  • 県内主要駅を中心に多くの帰宅困難者等が発生したが、災害発生時における基本原則(むやみに移動を開始しない)の普及や、市町村と交通事業者との情報連絡体制が十分でなかったことを踏まえ、帰宅困難者等対策の見直しを図ることが必要である。
  • 原発立地県でない本県でも東京電力福島第一原子力発電所事故への対処として、放射能のモニタリングをはじめとする情報収集・提供等の対策や、県外からの避難者への対応、計画停電への対応など、新たな対応策を講じることとなったこと等を踏まえ、原子力発電所事故に対応した応急体制の確立や、新たな事象が発生した場合における迅速な対応を図ることが必要である。

ケ 被害の甚大な市町村が、県への被害報告、応援要請を円滑に行うことが困難であったことや、職員の参集や本部の速やかな設置に改善の余地があったこと等を踏まえ、いつ起こるか分からない災害に備え、より迅速で的確な災害応急対策が実施できる災害対策本部体制の見直しが必要である。

(2)国の専門調査会最終報告・防災基本計画の修正

  • 専門調査会最終報告

中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の最終報告では、

○ あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきであること。

○ 今後の津波対策を構築するに当たっては、基本的に二つのレベルの津波対策を想定する必要があること。

・ 一つは、住民避難を柱とした総合的防災対策を構築する上で想定する津波であり、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波

・ もう一つは、防波堤など構造物によって津波の内陸への侵入を防ぐ海岸保全施設等の建設を行う上で想定する津波であり、最大クラスの津波に比べて発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波

○ 津波による浸水被害を軽減、あるいは避難のためのリードタイムを長くするため、粘り強い海岸保全施設等や多重防護としての道路盛土等の交通インフラの活用等により二重堤を整備するなど、地震・津波に強いまちづくりを推進していく必要があること。

○ ハザードマップの充実や、いざ津波が襲来したときには、どのような状況にあっても一目散に高台等に避難する、いわゆる「津波てんでんこ」の意識の徹底、防災教育の実施など、津波に対する防災意識の向上に取り組む必要があること。などの地震・津波対策の充実強化を図るべき旨が、さらに、防災基本計画の見直しに当たり、津波対策の計画における位置付けについて、「震災対策編」の中の一事項という取扱いについて、その構成も含めて見直すべき旨が提言された。

  • 防災基本計画の修正

平成23年12月27日に行われた国の防災基本計画の見直しでは、上記提言内容を具体化した見直しが行われたところであるが、その概要は次のとおりである。

    ○ 津波対策については、これまで震災対策編の中のひとつの特記事項として位置付け られていたが、津波災害対策に特化した「津波災害対策編」を新設し、予防、応急対策、復旧・復   

     興の各段階における津波対策を体系的に位置付けることとした。

    ○ 東日本大震災を踏まえた地震・津波対策の抜本的強化を図る。

・ あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波想定を実施する。

・ 「最大クラスの津波に対する住民避難を軸とした総合的な対策」と「比較的頻度の高い津波に対する海岸保全施設等の整備」の二つのレベルの想定とそれぞれの対策を講じる。

・ 浸水の危険性が低い地域を居住地域とする土地利用、避難場所・避難ビル等の計画的整備など、津波に強いまちづくりを推進する。

・ 強い揺れを感じた場合等迷うことなく迅速かつ自主的に避難することなどの知識の普及や、防災教育の実施、津波ハザードマップの整備など、国民への防災知識の普及を図る。

・  地震・津波に関する研究や観測体制の充実を図る。

・  受け手の立場に立った津波警報等の発表や、携帯電話等多様な手段による確実な伝達、具体的かつ実践的な避難計画の策定など、津波警報等の伝達及び避難体制を確保する。

・  浅部地盤データの収集・データベース化等の液状化対策や、天井等の落下物対策など、地震の揺れによる被害の軽減策を推進する。

○ 避難所等における生活環境改善や女性ニーズへの配慮や、土砂災害緊急情報の市町村への提供など、その他最近の災害等を踏まえた所要の見直しを行う。

(3)東日本大震災復旧・復興対策特別委員会の提言

東日本大震災における被害等を踏まえ、津波・液状化対策をはじめとする幅広い 分野・項目について、ハード・ソフトの両面にわたり、県が実効性のある防災対策等を推進するよう、千葉県議会の東日本大震災復旧・復興対策特別委員会から平成23年11月22日に提言がなされた。

提言では、「県においては、一つ一つの問題に適切かつ早急に対処し、一日も 早い復旧・復興を期するとともに、今後の災害に備えた防災対策を実行し、県民の生命・財産を守らなくてはならない」とし、その概要は次のとおりである。

○ 津波対策について

新たな津波浸水予測図について、県独自に今回の津波被害を踏まえて早期に作成すること。さらに、今後の新たな知見に対応し、不断の見直しを行うことなど。

○ 液状化対策について

過去の地盤データ等の収集や今後行われるボーリング調査のデータを活用し、液状化危険度マップの精度向上を図ることなど。

○ 石油コンビナート等特別防災区域の防災対策について

県内の特定事業所に対し、リスクマネジメント体制を整備し、法律を踏まえた安全基準を策定するよう必要な指導・助言を行うことなど。

○ 千葉県震災復旧及び復興に係る指針原案について

復旧・復興に係る事業の実施に際しては、地域の実情を把握している市町村との連携を密にして実施することなど。

○ 千葉県地域防災計画の見直しについて

市町村では、県の地域防災計画がどのように修正されるのか注視していることから、早期に計画の修正を行うこと など。

○ 東京電力福島第一原子力発電所事故に係る対処方針について

放射性物質に関しての抜本的な解決策について、国に対し、放射線量の安全基準を策定し、基準を超えた場合の対策を一日も早く示すよう強く要望すること など。

 

Ⅱ 地域防災計画修正の基本方針

  • 3つの視点による見直しの推進

前掲の課題等を踏まえ、今回の地域防災計画の見直しに当たっては、次の3つの視点を重視するものとする。

(1)東日本大震災の被害・対応・教訓を踏まえ、より実効性の高い計画への見直し

今回の震災は、東北地方に甚大な被害をもたらしたが、本県においても、津波により、14名の死者、2名の行方不明者が出たほか、住家、漁港、保安林、海岸保全施設、河川施設、港湾施設、農地や農業用施設などにも大きな被害があった。

さらに、東京湾岸の埋立地や利根川沿いの低地において、広範囲に液状化が発生し、人的被害はほとんどなかったものの、住宅、橋梁・道路、河川施設、海岸保全施設、上下水道などのライフライン、学校、農業用施設などに被害があった。

一方、県、市町村、ライフライン事業者の今回の震災の対応状況や、旭市・香取市の被災者の方の避難・避難所生活の状況等の検証を行い、様々な課題が浮かび上がったところである。

今回の見直しでは、これらの被害や検証結果を踏まえ、実効性の高い計画に修正することが重要である。

(2)あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を前提とした防災計画の見直し

中央防災会議は、今回の東北地方太平洋沖地震を我が国の過去数百年の資料で は確認できなかった大規模地震であり、過去の地震・津波を前提とした、従前の想定手法の限界を意味するものであったと報告している。

これらの結果を踏まえ、今後の地震・津波対策は、過去に発生した地震・津波像の全容が必ずしも十分に解明されていない場合であっても、オーバーデザインとなることを恐れずに、あらゆる可能性を考慮して、最大クラスのものを想定することとする。

また、現在国において検討されている南海トラフの巨大地震や、これに伴う長周期地震動の影響等についても、十分考慮する必要がある。

なお、大規模な地震では、他の災害が併発することにより、被害が拡大する 恐れがあることを踏まえ、これらを可能な限り事前に想定して、予防・応急対策を行うことも重要である。

(3)減災や多重防御の視点に重点を置き、ハード対策とソフト対策を組み合わせた総合的な防災対策の推進

最大クラスの地震・津波に対しては、海岸保全施設等のハード整備に依存した防災対策には限界があり、今回の巨大な津波では、本県においても、海岸保全施設に一定の減災効果が認められたものの、施設の機能を超えた越流等が発生し、多くの死者が発生した。したがって、今後想定すべき巨大災害に対しては、減災の視点に重点を置き、住民の避難行動を軸とした、人命の安全を守る対策を最優先に実施していかなくてはならない。

そのためには、住民の「自助」、住民組織等の「共助」、行政による「公助」の各主体におけるソフト対策を講じることが不可欠である。その上で、最大クラスの津波に対しても、多重防御の視点から、海岸保全 施設や、防波堤や土手、保安林などを組み合わせ、ハード・ソフトを織り交ぜた、総合的な防災対策を推進することが重要である。

  • 見直しの方向性

(1)地域防災力の向上

大規模な災害においては、発災直後の県民一人ひとりの自覚や行動が生死を分ける結果にもなり得る。平時から正しい知識を持ち、県民自らが考え、行動することの重要性を再認識し、自助の取組みを強化することとし、併せて共助の中核となる人材を養成するなど、自主防災組織等の機能強化を図る。

また、県や市町村をはじめとする防災関係機関においても、県民の安全・安心を守るためにとり得る手段を尽くし、自助・共助・公助が一体となって、県内全域の防災力の向上を図る。

さらに県では、この考え方に基づき、各主体の役割等を明確化した(仮称)防災基本条例制定の準備を進める。

(2)震災編の見直し

ア 津波対策の強化・推進

今回の震災では、戦後の災害史上最多の死者数を記録したが、その多くが、津波による被害者であった。

本県でも津波による死者が発生するなど、震災対策の中で、とりわけ「津波対策」がクローズアップされることとなった。

津波の場合、地震発生直後の県民の避難行動が、生死に直接影響するものであり、少なくとも発災初動期においては、県民自身の「自助」に依存するところが多い。県民が津波被害を回避するためには、津波に対する正しい知識の習得が重要であり、「津波防災の日(毎年11月5日)」などの様々な機会を捉えて、平時からの県民への普及・啓発の推進、防災教育の充実、津波避難訓練の実施による自助・共助の取組みを推進する予防対策や速やかに避難行動が行えるよう情報伝達手段の強化など応急対策の取組みが欠かせない。

今回の計画修正においては、津波対策の重要性をアピールするとともに、予防・応急双方の対策を充実させ、津波による犠牲者を出さないための対策の強化を図っていく。

その上で、今後の津波対策を構築するにあたっては、「ハード」の対策と「ソフト」の対策の連携・融合を図る。

ハード対策としては、海岸保全基本計画に基づき、津波に対する防護施設の整備が必要な箇所について順次進めていくことが重要である。特に、県内で被害が顕著であった九十九里沿岸については、海岸の利用形態や環境面に配慮した津波対策を推進していく。また、港湾における津波に対する防護のあり方の検討を行い、対策を推進していく。

さらに、津波警報等に伴う避難誘導や水門等の閉鎖については、従事する者の安全性にも十分配慮した対策を講じることとする。

また、今回の津波において、一定の効果が認められた海岸保安林の整備・育成についても、より効果を高めるような取組みを計画的に進めていく。

ソフト対策の目的は、県民がいかに津波被害を回避し得るかということにかかって いる。そのため、今回、「東日本大震災千葉県調査検討専門委員会」の提言を踏まえて作成する「津波浸水予測図」を市町村に提示し、市町村による津波ハザードマップや津波避難計画の作成や見直しを支援していく。

市町村は、津波避難計画を作成又は見直しをする上で、津波警報等の情報を受けて の避難指示等の発令基準の明確化や、津波の浸水域等を想定した避難路、避難場所・施設の点検・整備や、避難の方法等について、住民へのさらなる周知に努めるものとする。

さらに、災害時の情報通信手段の整備や複数の通信手段の確保等に取り組み、住民への正確かつ迅速な情報伝達を確実に行うものとする。

また、今回津波の被害のあった地域を中心として避難生活が長期化したこと等を考慮し、避難所の点検・整備や、避難所運営マニュアルの作成など、円滑な避難所生活に向けた取組みを強化するものとする。

  • 液状化対策の推進

今回の震災では、「津波」が全国的に大きくクローズアップされたが、本県では、「津波」だけでなく、「液状化」による被害が顕著であったことが特徴といえる。

人的被害はほとんどなかったものの、東京湾岸の埋立地や利根川沿いの低地など広範囲にわたり、噴砂、沈み込み、浮き上がり、抜け上がり、地波等の液状化現象が確認され、これらを主な原因として5万棟を超える建物被害や、上下水道施設を中心とするライフライン被害をもたらした。

液状化現象が、直ちに人的被害につながることは少ないが、上下水道等施設の被害は、被災地域の県民の生活に大きな影響を与え、また、沈み込み等の液状化現象により傾いた住家で生活することによる健康被害を及ぼすことも明らかとなってきたところである。今回の震災を踏まえ、液状化に強いまちづくりに向けた取組みをさらに推進する。

 今回被害が顕著であった上下水道施設等のライフラインや、道路・橋梁等の公共 施設については、その機能の維持や早期復旧が、県民の生活や地域全体の復旧・復興にも大きく影響するものであり、地盤の改良や施設の耐震化の推進など、液状化しにくい、又は液状化に強い施設づくりを推進する。

また、今回、「東日本大震災千葉県調査検討専門委員会」の提言を踏まえて作成 する「液状化しやすさマップ」や「戸建て住宅に関する液状化有効工法」等を市町村・県民等に周知することにより、市町村によるハザードマップの作成など、各種の予防・応急対策の推進を支援するとともに、県民に対する液状化に関する知識の普及に努める。

さらに、今回の液状化被害への対応経過や教訓等を踏まえ、液状化現象により、 水道管からの漏水などライフライン施設の被害が発生した際の迅速な応急復旧のための体制整備に努める。

  • 支援物資の供給体制の見直し

現行の地域防災計画では、阪神・淡路大震災を踏まえ、平成11年に策定した「地震災害対策のための備蓄基本指針」に基づく、防災備蓄拠点の整備及び備蓄の促進等について記載をしているが、新潟県中越地震で問題化し、東日本大震災においても引き続き課題となった支援物資の管理供給体制の円滑化を図るため、新たに策定する備蓄及び物流に関する基本指針に基づいて体制を整備する。

この指針では、県民、事業所、市町村及び県などの各主体が備蓄すべき物資の種類や量、災害時要援護者や女性のニーズに配慮した物資等の備蓄に係る基本的な考え方について、今回の震災を踏まえて整理するとともに、物流についても、国土交通省が設置した「首都直下地震等の想定地域における民間の施設・ノウハウを活用した災害に強い物流システムの構築に関する協議会」における国、県、市町村、民間物流事業者の連携のあり方等の議論も踏まえながら、専門知見を有する民間物流事業者の施設、資機材及びノウハウを最大限に活用した物流拠点の効率的な配置や在庫管理、運搬等に係る基本的な計画を策定することにより、災害時における円滑な「支援物資の管理供給体制」を構築する。

また、保存期間や管理面で直接備蓄に適さない物資については、流通備蓄を活用することとする。昨年12月に県は、千葉県石油商業組合との間に災害時における全庁の自家発電設備及び公用車の燃料に係る優先供給協定を締結したところである。引き続き、県及び市町村は、新たな事業者との協定の締結に努めることで調達先を拡充し、支援物資の供給体制の強化を図る。

なお、災害時に円滑な物資等の供給を行うためにも、道路ネットワークの強化が重要であることから、災害時におけるリダンダンシー(多重化による代替性)を確保するなど、災害に強い道路の整備等を推進する。

 

  • 災害時要援護者等の対策の推進

今回の震災でも、死者の多くを高齢者が占めるなど、大規模災害に際して災害時要援護者が犠牲となる可能性が高いことが明らかとなった。

また、避難生活を送る災害時要援護者はもとより、今回の計画停電において、 在宅で人工呼吸器等を使用する重度の障害者・難病患者に対しての特別のケアが必要となったこと等を踏まえ、平時から、その対応を検討しておくことが重要である。

これらのことから、様々な対策を講じる上で、高齢者、障害者、難病患者、妊産婦、又は外国人などの災害時要援護者に配慮した対策を推進する。特に、災害時要援護者避難支援プラン(個別計画)については、各市町村において策定が進んでいない状況であり、県民及び市町村に対し、住民相互の連携強化、災害時要援護者支援への取組、及び個別計画策定に向けての働きかけに努める。

また、避難所の運営では、災害時要援護者への配慮とともに、生活環境の改善に努め、併せて、男女共同参画の視点をもって対応するものとする。

  • 帰宅困難者等対策の推進

今回の震災では、県内で多くの帰宅困難者等が発生し、帰宅しようと駅周辺に 集まった人々が駅前に滞留した事例が多く見られ、駅と市町村との情報連絡体制が不十分であったことなどにより、一部では混乱も生じた。

また、近い将来、本県に大きな影響があると考えられる東京湾北部地震においては、今回を大幅に上回る帰宅困難者等の発生が見込まれており、今後に備えた対策が不可欠である。災害発生直後に多くの人々が一斉に帰宅を開始した場合には、路上や駅周辺で大混乱が発生して負傷する恐れなどもあり、まずは、むやみに移動を開始せずに身の安全を確保し、落ち着いて交通情報や被害情報を確認したうえで適切な行動を取れるよう、予め心がけることが重要である。

このため、県では、県民、事業者、行政のそれぞれの役割に応じた帰宅困難者等対策を、(仮称)防災基本条例に位置付ける。

さらに、発災時における一斉帰宅行動を抑制するため、平常時から交通事業者、 市町村及び各企業団体等と協力しながら様々な媒体を使って広報を行い、「むやみに移動を開始しない」という基本原則の周知徹底を図る。

また、主要駅等における駅前滞留者の発生について、鉄道駅など交通事業者、市町村、県、駅周辺に立地する企業等がそれぞれに連携し、駅周辺ごとの実情に応じた具体的な対策を講じるため、駅周辺帰宅困難者等対策協議会(仮称)の設立を促進し、県有施設を含め一時滞在施設を確保するとともに、各施設における情報提供や物資の備蓄のあり方の検討など、帰宅困難者等の支援策の強化を図る。

加えて、これまで実施してきた帰宅支援ステーションの確保等の徒歩帰宅支援の取組みについても協定締結企業の増加を図り、さらなる充実を図っていく。

 

カ 庁内体制の強化

本県が地震災害により災害対策本部を本格的に運用したのは、今回の震災が 初めてであり(注)、県災害対策本部では、自衛隊の災害派遣要請、石油コンビナートにおける大規模な火災、福島第一原子力発電所事故に因る放射性物質の影響や計画停電、東北3県への支援など、これまでに経験したことのない、様々な事象への対応を行ってきたところである。

これらにより得られた多くの経験に加え、未曾有の被害が発生した東北3県の 状況も参考として、より大規模な災害が発生した場合でも、迅速で効果的な災害応急対策が実施できるよう、県の災害応急活動体制の強化を図る。

○ 今回は勤務時間中に発災したため、災害対策本部事務局の職員参集や本庁舎5階大会議室への事務局室の設営を迅速に行ったが、それでも、事務局室の設営には、発災から50分程度を要している。

休日や夜間等の勤務時間外に発災した場合は、職員の登庁も困難になることから、さらに時間を要することになる。

災害対策本部が迅速かつ自立した機能を発揮できるよう、本部事務局室を常設化し、自家発電設備を強化した危機管理防災センターを整備する。

○ 想定外の業務等が発生した際、担当部局の決定に時間を要する場合があったため、統括本部員(防災危機管理監)による庁内調整機能の強化を図る。

○ 本部事務局各班の担当業務の範囲が不明確で業務量に偏りがあったため、班編成、人員配置等を見直し、より効率的な組織体制とする。

○ 石油コンビナート等防災本部の事務局員は、災害対策本部の事務局員も兼務してい  

 たため、大規模な震災と石油コンビナート火災の双方に対応することとなったたが、同時進行的に発生する業務への対応が困難であったことから、的確に対応できるよう、それぞれに専任の職員を配置する。

○ 被害が甚大な市町村では、その対応に忙殺され、県への被害報告もままならない 状況であった。また、東北3県では、津波により市町村機能そのものが失われたケースも発生した。

被害が甚大な市町村については、県から積極的に職員を派遣して情報収集を 行うとともに、必要に応じ、地域振興事務所長を現地災害対策本部長とするなど、迅速に市町村支援が行える体制を整備する。

注:平成17年4月11日の千葉県北東部を震源とする地震(県内最大震度5強)により災害対策本部を設置しているが、このときは大きな被害はなく、その日のうちに本部を解散している。

なお、昭和62年12月17日に発生した千葉県東方沖地震では災害対策本部を設置していない。


 

(3)大規模事故編(放射性物質事故対策計画)の見直し

本県には原子力災害対策特別措置法に規定される原子力事業所は立地して おらず、また、茨城県の東海第二発電所など他県に立地する原子力事業所の「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ:Emergency Planning Zone)」にも入っていない。このため、本県の放射性物質事故対策計画は、県内の核燃料物質使用事業所等における事故を想定したものとなっており、県外に立地する原子力発電所の事故に対応した計画にはなっていない。

しかしながら、今般の東京電力福島第一原子力発電所事故では、放射性物質がEPZの範囲を著しく超えて飛散したため、本県でも、一部の農産物で食品衛生法に基づく暫定規制値を超える放射性物質が検出されたほか、ちば野菊の里浄水場等から厚生労働省が示した乳児による水道水の摂取を控える指標等を超える放射性ヨウ素が検出されるなど、様々な影響が発生し、県民に大きな不安と混乱を与えてきた。

原子力災害については、本来、国及び事業者が適切に対応すべきものであるが、今般の原子力発電所事故により本県にも影響が生じている状況を踏まえ、放射性物質事故対策計画を県外に立地する原子力発電所等における事故にも対応した計画とする。

具体的には、原子力発電所等で事故が発生した場合の県の情報収集体制や県民、関係機関に対する情報発信体制の整備、県民からの問い合わせに対応する総合窓口の設置、モニタリング体制の強化と測定結果の県民への提供等について、放射性物質事故対策計画に定めることとする。

なお、修正にあたっては、国の防災基本計画の原子力災害対策に係る修正の動向 に留意するとともに、併せて、県内の核燃料物質使用事業所等における事故への対応についても、実情に即した見直しを行うこととする。

(4)風水害等編の見直し

震災編等の見直しに伴い、県民の防災力向上、災害時要援護者対策の推進及び庁内体制など、防災計画各編の整合性を図るため、所要の見直しを行う。

その他、防災基本計画の風水害対策編が修正されたことに伴う所要の見直しを

行う。

 

 

3 今後のスケジュール

本基本方針に従い、計画修正原案を作成し、意見聴取手続き等を経た上で、なるべく早期に防災会議を開催し、地域防災計画の見直しを決定する。